レンズ沼奮闘記

 ぬま、であります。


 もともとくるまを撮りたくて再開したカメラも、いつしか写真を撮ること自体が趣味になっていて、ファインダー越しに愛車やいろんな景色を眺めながらぼんやりシャッターを切り続けて早三年。はじめのうちは写真撮れるだけでも楽しいし、カメラの使い方ひとつ覚えるだけでも楽しいわけですが、まあ一年もすると倦怠期が訪れるわけです。すると人は次にどうなるのか。そう、ぬまであります。


 前回から時系列はすっ飛びますが、フルサイズ機を買ったときに Carl Zeiss の Planar 1.4/50 を譲ってもらいました。最初はマニュアルフォーカスのレンズなんて……と思っていましたが、そうはいっても他にレンズもないのでしばらく使っていると、これが意外と何とかなるものです。解像のピークが f/5.6 から 8 くらいだったこともあり、基本的には絞って使っていたので、ちょっとくらいピントが甘くても大丈夫だったというのもあるのかもしれません。しかし明るいレンズは絞りを開けて使いたくなってしまうのが人情というもので、そのあたりから雲行きが怪しくなっていきます。

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中距離から無限遠にかけてはそつなくこなす。


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近距離ではあらゆる収差が顔を見せる。


 Planar は開放でふわっと、絞って骨太が売り(?)のレンズで、特に最短付近の f/1.4 ではピント面に独特のハロをまとって収差のオンパレード、さながら凄みのあるエレクトリカルパレードといった様相です。それはそれで味わい深いレンズなのですが、開放からしゃっきりと写ってほしい場合もあり……機材の不足は腕でカバーとはいいますが、やはりどうにもならない状況もあり、次に手を出したのが Voigtländer Nokton 58/1.4 でした (これも縁あって譲ってもらった)。Nokton は大変素性の良いレンズで、開放でも絞ってもそこそこ安定して描写してくれる上に、大変ピントが合わせやすいといいことづくめ。


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繊細な線の細さ。


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しっとりと柔らかに。


 当初は Nokton を導入したら Planar を売りに出そうかと思っていたくらいなのですが、しかし Planar の味も捨てきれず、結局両方とも気分で使い分けています。一方で、どちらのレンズも絞ってカリカリシャープになる類のレンズではなく、くるま撮り用にメインで使っている Apo Sonnar 2/135 のシャープさが標準玉でも使えないものか……と、激戦区にあって決定打にいまいち欠ける 50 mm 近傍の帯に短し襷に長し状態にやきもきしていました *1。そんな時、ひとつのレンズを思い出したのです。


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本物をあなたの手に。


 われわれはかしこいので、ボディを D850 に換えた時に気付いたのです。どうせ何を使っても性能を追えばてっぺんまで辿り着くのだから、一番はじめにてっぺんを取ればいいと。使ってみたいレンズは無限にあるけれど、例えば 50/1.2S とか、もっと古いレンズとか、必ずしも性能重視じゃないレンズで遊んでいるときにも、安心して使える一本があればきっと心の支えになるはず。そんなワケで、まずはてっぺんから。電子接点はついているけれど最新の電磁絞りレンズとは違って電子部品はほとんどなく、一度手にしてしまえば一生モノです。使いこなすのにも一生かかるかもしれませんが。


 このところずっと良い写真ってなんだって悩んでいて、まだその答えは出てはいないのですが、少なくとも自分が信じる道具で撮り続けていればその答えに近づけるのかな、と少し気を取り直したところです。クサいこと言ってないで勉強して練習しろよって話なんですが、まあそういう散財の言い訳日記でした。


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考えて、撮る。そのテンポを MF レンズで *2

*1:純正でいえば 58/1.4G はどちらかというと癖玉の類で、50/1.4G も 50/1.8G もずば抜けてシャープなわけではなく、D タイプは言わずもがな、Micro 60/2.8G はそろそろリニューアルしそうだし……解像力番長の Sigma 50/1.4 Art は AF の合焦がいまいち信用できないし (30/1.4 DC Art の出荷時ピンずれ状態のひどさに少し辟易していた。USB ドックで補正したら見違えるように良くなったけれど)、どうせ MF でピントを追い込むなら Micro 55/2.8S か、いっそ Makro-Planar 2/50 かな、なんて思って某カメラ屋の入荷状況をチェックする毎日でしたとさ。

*2:ちなみにピントリングの感触は Planar がぬるぬる、Nokton がするする、Otus がさらさらといったところです。ぜひ店頭でお確かめください。